【WikiEXPOグローバル専門家インタビュー】Sergei Grechkin氏：AI、リスク、そして外国為替の未来を語る

AIFM Cayros Capitalで最高戦略・リスク責任者（Chief Strategy and Risk Officer）を務めるセルゲイ・グレチキン氏（FRM）は、資産運用、投資戦略、リスク管理の分野で15年以上の経験を有しています。CIS（独立国家共同体）地域最大級の金融グループにおいて、数十億ドル規模のM&A取引に直接関与した実績を持ち、また米国連邦準備制度での勤務経験も有するなど、国際的な金融市場およびリスク管理に関する深い知見を備えています。

中央銀行での勤務時には、2,500億ドル超のポートフォリオを監督し、金融グループのデフォルト防止と数十億ドル規模の資産保全を目的とした危機対応計画を策定しました。現在は、堅牢なファンド戦略の構築を支援するとともに、投資家の資本を保護し投資目標の達成をサポートする包括的なリスク管理システムの開発を主導。プロの投資家がボラティリティの高い市場を乗り切るための支援を行っています。

キャリアパス

Q1：どのようにしてリスク管理の分野に入り、現在のような専門家になられたのでしょうか?キャリアの転機についてお聞かせください。

私のキャリアはDeloitteからスタートしました。金融学の修士号を活かし、金融システムや経営管理に関する深い基礎知識を培いました。その後、財務・M&A部門に異動し、投資銀行という新たな分野に踏み込みました。

大きな転機となったのは、中央銀行への入行と、監督チームの責任者に昇進したことです。加えて、米国連邦準備制度を訪れ、その専門家たちと知識を共有・交換できた経験も非常に貴重でした。

中央銀行での職務では、CIS地域および海外の主要な金融・産業グループを監督しました。これらは多数の銀行、投資ファンド、ブローカー、非金融企業で構成されており、総時価総額は数十億ドルを超えていました。こうした多様なポートフォリオを統括する中で、リスク監視や規制コンプライアンスに対する包括的なアプローチを確立し、同時にEUおよび米国の監督当局との国際協力も推進しました。これらの経験が、複雑な事案に対応する力を養い、大規模で多面的なリスク管理の専門性を確立する基盤となりました。

過去4年間は、Cayros Capitalで戦略・最高リスク責任者として、別の視点から10億ユーロを超えるポートフォリオを監督し、専門知識をさらに磨いてきました。現在の焦点は、リスク管理の実務におけるイノベーション、機械学習モデルの統合によるリスク評価の精度向上、そしてリスクポリシーの国際基準への整合化です。私の情熱は常に、市場で最高のリスク／リターン比を達成するために革新的なソリューションを追求することにあります。

AIと取引のセキュリティ

Q2：金利デリバティブの価格設定やリスクモデリングにおけるAIの応用について最近発表されていますが、FX取引のセキュリティやブローカーのリスク管理におけるAI技術の未来をどのように見ていますか?

AIは、リアルタイムのデータ分析や予測モデリング、行動分析モデルを通じてリスク評価を高度化し、FXやブローカーのリスク管理を大きく変革するでしょう。

機械学習はヘッジ戦略の最適化に寄与し、ブロックチェーンの統合は安全かつ透明性の高い取引を実現する可能性を秘めています。

しかしながら、市場にはAIリスクの専門家が圧倒的に不足しており、多くの企業の意思決定層はAIモデルの仕組みや運用に十分な理解を持っていません。AIが依然として「ブラックボックス」として扱われる中、透明性と規制適合性を確保するためには、専門のリスクマネージャーの存在が不可欠です。

Q3：CROとして、FX市場における透明性の重要性をどのように捉えていますか?それはWikiFXが提唱している取引のセキュリティ理念と一致しますか?

価格設定や注文執行の透明性は、不正操作や風評リスクを防ぎ、信頼を築く上で欠かせない要素です。

これは、ブローカー検証やオープンデータの公開を通じて取引の安全性を重視するWikiFXの理念と一致しています。実際、一部の企業では規制や信頼の要請を背景に、より高い透明性とコンプライアンスを追求するための技術活用が進み、従来型ブローカーモデルへの移行が見られます。

投資家教育と知識普及

Q4：連邦準備制度での経験や専門記事の執筆を通じて、複雑なリスク管理の知識をどのように投資家に分かりやすく伝えているのでしょうか?

複雑なリスク管理を投資家に伝える際には、「分散」や「ボラティリティ」などの概念を専門用語に頼らず、分かりやすく説明することが大切です。

たとえば、身近な比喩を交えながら、ポートフォリオのリバランスといった実践的なステップの重要性を示し、現実の事例を通してその利点を理解してもらいます。

また、データを詰め込みすぎずに要点を明確化するため、シンプルなチャートなどの視覚資料を用い、統一的なアプローチで異なる投資機会を比較できる「リスク／リターン比率」を提示することを心がけています。

業界の未来と個人的な洞察

Q5：世界の金融リスク管理における最大のトレンドは何だとお考えですか?FXやデリバティブ市場にはどのような影響があるでしょうか?

現在の最大のトレンドは、AIと高度なデータ分析の統合です。これにより、リスク管理は受動的な対応から能動的な予測戦略へと進化し、地政学的・経済的な不安定性の中でリスク最適化とリターン向上を実現しています。

同時に、AI導入をめぐる規制の変化も進行中であり、将来的にはAIリスク管理とコンプライアンスの枠組みに新たな要件が求められるでしょう。

この流れは、外国為替市場におけるボラティリティや政策不確実性（例：米国の関税政策、選挙など）を高め、日次取引高の増加やヘッジ需要の拡大につながると考えられます。

デリバティブ市場では、シナリオ分析に基づいたリスク軽減のために、FXオプションや金利スワップの取引量が増える見込みです。また、暗号資産分野ではブロックチェーンによる決済効率の向上という利点がある一方で、新たなサイバーリスクやコンプライアンスリスクにも直面しています。

グローバルな交流と展示会の価値

Q6：WikiEXPOのような国際業界展示会について、どのようにお考えですか?

過去3年間にわたり訪問しているWikiEXPOのような国際展示会は、イノベーションと協働を促進する貴重な場だと感じています。多様な人々が一堂に会し、アイデアを共有し、ネットワークを広げ、業界の可能性を切り拓く。そして異なる視点を知り、新しい発想を得ることができます。

WikiEXPOグローバル専門家インタビューについて

WikiEXPOの主催者であるWikiGlobalは、オフライン展示会を通じて国際的な対話と協働を推進しています。金融規制・テクノロジー・ガバナンス分野のグローバル専門家との交流を通じて、フィンテックとレグテックの統合を強化し、規制の効率性と精度を高め、業界の自主的な健全化を促進しています。

これらの取り組みにより、金融機関がベストプラクティスを導入し、より透明で強靭なエコシステムを構築することを後押しし、最終的には投資家にとって安全で信頼できる取引環境の実現を目指しています。

WikiFXについて

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