
世界有数のオンライン証券・FXプラットフォームとして知られるサクソバンクが、いま国際金融業界の厳しい視線を一身に浴びています。
デンマーク、香港、オランダという三つの金融当局から相次いで制裁金を科され、総額は日本円で80億円を超える規模に上ります。表向きは「個別案件」と説明されながらも、浮かび上がるのは、長年にわたる内部統制の緩みと、グローバル展開の陰で見過ごされてきた管理体制の限界です。
「世界水準の金融機関」という看板の裏側で、何が起きていたのか。
今回は、三つの地域で発生した一連の制裁事案の全体像を整理し、その実態に迫ります。

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デンマーク史上最大級の行政罰 ホワイトラベル取引の盲点
まず衝撃を与えたのは、デンマーク金融監督庁による制裁でした。
サクソバンクに科された行政罰は、3億1,300万デンマーククローネ、日本円でおよそ75億円。近年の同国金融史の中でも、最大級の制裁金と位置づけられています。
問題となったのは、いわゆる「ホワイトラベル取引」です。
ホワイトラベルとは、パートナー機関がサクソバンクのプラットフォームを自社ブランドとして顧客に提供する仕組みのこと。
サクソバンクは自社の取引プラットフォームを他の金融機関に提供し、提携先が自社ブランドで顧客にサービスを提供するモデルを広く展開してきました。効率的な拡張戦略である一方、監督当局が長年懸念してきたのが、顧客管理とマネーロンダリング対策の実効性でした。
FSAの調査によれば、サクソバンクは2021年から2023年にかけて、顧客関係の目的や性質を把握するための情報収集を怠り、継続的なモニタリングも不十分であったと指摘されています。
特に問題視されたのは、「誰が、何のために、どの資金を動かしているのか」という金融機関の基本原則が、ホワイトラベル先の管理任せになっていた点です。
当局は、具体的なマネーロンダリング事例こそ確認されなかったものの、「制度的欠陥そのものが重大なリスクである」と断じました。
注目すべきは、当初算定では、さらに高額な制裁が想定されていました。
サクソバンクが調査に全面協力し、早期に是正措置を取ったことが減額理由となりました。それでも残った制裁額は、経営に無視できない重みを持ちます。
キム・フルナイ最高経営責任者(CEO)はこの結果を真摯に受け止め、対策に巨額の投資を行っていると強調していますが、一度失われた「北欧の透明性」という看板を取り戻すのは容易ではありません。

香港での暗号資産販売問題 閉鎖後に突きつけられた代償
デンマークの制裁とほぼ同時期、アジアでも別の問題が表面化します。
2026年1月、香港証券先物委員会は、サクソバンク香港法人に対し、400万香港ドル、日本円でおよそ8,000万円の制裁金と業務上の厳重注意を科しました。
問題となったのは、暗号資産関連商品の販売姿勢です。
本来、専門投資家向けに限定されるべき32種類の暗号資産商品が、一般の個人投資家に提供されていました。期間は2018年11月1日から2022年11月25日まで、実に4年間に及びます。
調査で判明した取引件数は1,446件。
対象顧客のうち130人が一般投資家でした。商品には上場暗号資産デリバティブも多数含まれ、価格変動リスクの極めて高い内容でした。
さらに深刻だったのは、顧客の知識確認がほぼ行われていなかった点です。
当局は、87人の顧客について暗号資産投資の理解度評価が実施されていなかったと指摘。
警告文の提示やリスク説明も不十分で、販売プロセスは事実上「無防備」に近い状態でした。
皮肉なのは、この制裁が、香港拠点閉鎖から1年後に発表されたことです。
サクソバンクはすでに香港市場から撤退していましたが、過去の管理不備は清算されることなく、遅れて経営に重くのしかかりました。
オランダでの合併後遺症 BinckBank問題の責任を引き継ぐ
三つ目の制裁は、欧州大陸から届きました。
2025年に、オランダ金融市場監督局は、サクソバンクに160万ユーロ、日本円でおよそ2億6,000万円の制裁金を科しました。
対象となったのは、2019年に買収したオンライン証券「ビンクバンク(BinckBank)」の旧体制で発生した一連の違反です。
サクソバンクは「法的承継者」として、過去の管理不備の責任を引き受ける形となりました。
違反内容は以下の通りです。
・顧客資産の分別管理不全(50万ユーロ)
・業務プロセスの統制欠如(50万ユーロ)
・顧客対応の著しい不備(60万ユーロ)
調査期間は2021年1月1日から2023年4月11日。
顧客からは、取引遅延、誤請求、株式の所在不明、他社への口座移管の長期化など、実務上の混乱が相次いで報告されました。
監督局幹部は、「投資家は資産の安全を信頼できなければならない。その前提が崩れていた」と厳しく批判しています。
制裁金は三段階に分けて科され、管理不全が「極めて深刻」と評価されたことを物語っています。
身売りの噂と「信頼回復」への遠い道のり
デンマークでのAML(マネロン対策)不備、香港での商品分類ミス、オランダでの資産管理の混乱。これらはすべて、内部統制の糸がプツリと切れていたことを示唆しています。
サクソバンクは、三件すべての制裁を受け入れ、争わない姿勢を示しました。
創業者兼CEOのキム・フルネス氏は、「過去数年間で戦略的・運営的な改革を実施し、マネーロンダリング対策と統制強化に巨額投資を行った」と説明しています。
実際、同社は
・顧客審査体制の再構築
・モニタリングシステムの刷新
・地域拠点の統廃合
を進め、アジア太平洋では香港、上海を閉鎖し、豪州子会社の過半数株式も売却しました。
同時に、IPO断念後の資本戦略として、売却交渉の噂も絶えません。
欧州の投資ファンド、米国大手証券など、複数の買収候補が報じられています。
金融業界において、信頼を築くには数十年かかりますが、それを失うのは一瞬です。サクソバンクが再び「信頼に値するパートナー」として市場に戻ってこられるのか。あるいは、このままガバナンスの荒波に飲み込まれていくのか。市場はその行方を厳しく見守っています。
